不適切保育を掘り下げよう

不適切保育がニュースで報じられると、その保育者を「専門性の欠如」「職業適性が不適格」と切り捨て、批判する保育者がいます。しかし、わたしは逆に「一度たりとも不適切な保育をしたことがありません」と断言できる保育者のほうが怖いと思います。


子どもとの関わり方に完全な正しさはありませんし、いつでも適切なタイミングで子どものニーズ全てに笑顔で応えられるはずがありません。開き直れということではなく、私たちは既に不適切保育をしてしまっていたし、常に誰でもしてしまう可能性があると認める必要があると思っています。

そもそも、わたしたちの価値観は幼少期から積み重ねてきたものです。家庭環境、学校、友達との関わり、テレビや漫画…色々な情報や経験から身についた考え方や癖は、よほど本人が自覚しない限りは改善するどころか気づくことも難しいでしょう。人によって気になることや許せないことが違うので、良かれと思って子どもに厳しく指導していることが不適切保育と捉えられてしまうことも多いと思います。

大切なことは、子どもにとってどうか?を常に考えると同時に、自分の発言や態度がどういう感情や価値観から起こっているのかに気づくことです。保育者としてのプライド、優越感、自信のなさ、疲労感、頑張っているのに評価されない憤り、コンプレックス…無意識のうちに、不安や怒りの感情に影響されてミスを犯してしまうのがわたしたち人間です。体調や気分に波があることも含め、わたしたちはいつでも完璧ではいられません。「わたしが不適切保育なんてするはずがない」などと思わずに、今日はどうだった?と振り返るようにしてみましょう。